「自己啓発病」社会


2010年、受験勉強から解放され、生まれて初めて知的好奇心に従って書店の本を眺めた時、既にあまりにも多くの”ビジネス書”や”自己啓発本”があった。今でも書店に行くたびに、その量やラインナップの更新スピードに少し引く。

この社会がどうやって生まれたのか、これは異常なのか必然なのか、今後どうなるのか、今やっている英語の勉強や知的活動は、ベクトルがおかしくなっていないのか、それらを考える上でのヒントになるかと思って読んだ。けど内容はともかく、主張にノイズが多すぎてそちらが気になってしまった。



「自己啓発病」社会(祥伝社新書263)

「自己啓発病」社会(祥伝社新書263)



・概要
自己啓発がこれほどまで蔓延した根源として、スマイルズの『自助論』の存在がある。小泉元総理や勝間和代、その他多くの自助論礼賛主義者を否定し、これからの社会はどうなっていくべきかを論じている。


・感想
日本で流通している自助論の抄訳が、本来の主張から離れていて、本当は”精神性”にこそ重きが置かれるべきだ、という章については面白く読めた。が、そもそも自助論を読んだことがないのであまりしっくりくるみたいな感想はないが・・
それよりも、政治批判や、他のビジネス本著者批判、社会批判などが過剰なくらい(おそらく本の60%くらい?)あり、そこが気になった。

最初に筆者プロフィールを読んだ時に、「早稲田中退、父はヤクザ、早大在学中は学生運動に没頭し、共産党に傾倒」といった文があり、割と偏見を持ちながら読み進めたことも原因としてある。また、冒頭に「親殺し、子殺しをする動物は人間だけだ」とあるが、いやいや全然そんなことないでしょ、って思って斜に構えた見方で入ったからかもしれない。



・フラットであること
上記の理由により、ところどころ興味深いところ、ためになる箇所もあったが、往々にして否定的な読み方をしてしまった。せっかく同じ時間をかけて読んだのだから、もったいないなと思う。

どんな人が書いているか、本質とは別にどんなことが論じられているか、それだけで全てを判断することは簡単だが、それでは思考停止と言われても仕方がない。

まずはフラットに受け入れること、その上で自分の価値観と照らし合わせること、人の話を聞く上でも変なバイアスをもってのぞむべきではないな、と思った。ちなみにこの筆者の話は、書籍だから興味ないところは「おじいちゃんがまたなんか過激なこといってるよ」くらいで読み飛ばせたから良いものの、面と向かって話されたら相当キツイだろうなと思った。




ちなみに内容としては、最終的に相互扶助していきましょう。勤勉と立身出世で他人を蹴落としてはいけませんよ、蹴落とせるような社会にしてはいけませんよ、っていった感じの結論で、納得感はあまりなかった。



「自己啓発病」社会(祥伝社新書263)

「自己啓発病」社会(祥伝社新書263)