あのとき始まったことのすべて

最高。
最高に優しくて、希望に満ちていて、やっぱりすごく好き。




たぶん、一番好きな作家の、「中村航」さんの本。

社会人になって数年目の主人公が、中学の同級生の女の子と再会するところから始まる。


めちゃくちゃ読みやすくて、けどすごく大事なことや、大切にしたい価値観に触れられる。一つ一つの言葉が、丁寧に紡がれている。この作品でも、他の作品でも。


・すごい人

中村航さんは同じ高校の先輩。ちなみに2個上には朝井リョウさんがいる。自分が何か成し遂げたわけではないけど、なんだか誇らしい気分になる。東日本大震災のときの日本人の行動が海外で評価されていると聞いた時の、くすぐったいような、「いいだろ」って気持ちみたいな、それと似た、誇らしい気分になる。だから、すごい人は、すごい。関わる人、共通点を持つ人を、幸せな気持ちにさせるから、すごいと思う。



・感受性

高校の時、一度中村航さんが講演に来てくれたことがあった。



たしか社会の教師が、講演の日に僕のクラスの授業で

「この中で中村航さんの本を読んだことある人手あげて?」

って聞いたんだけど、僕はおずおずと手を挙げて、そしたら「どうだった?」って聞かれて、すごく迷って、けど(どうだったんだろう、)って自問して、絞り出すように「丁寧で、優しい文章だと思いました」って答えた。

そしたらそれが社会の教師の求めてた答えと違ったのか、ピンとこなかったのか、さらっと流されて、そのときはなぜかわかんないけどショックを受けた覚えがある。(ちなみに今となっては、自分が読んでないのに生徒に聞いて、その生徒の答えを流すとか、無責任すぎるだろ、コミュニケーション下手かよ、って思う。)


で、そのショックを受けた理由が今ならなんとなくわかって、たぶん、15歳の自分は「自分の感受性は万人と共有できる」って思ってたのではないか。
「自分が素敵だ」と思ったものはちゃんと口に出して表現すれば他の人にも「なぜそれを素敵だと思ったか」が伝わると思っていた。「カラスは黒いね」って言ったら大体の人が「うん、黒いね」って共感できるのと同様に、「丁寧で優しい文章ってあるよね」って言ったら「うん、あるよね」ってなるかと思ってたけど、そんなことはない。

海を見たことがない人に海の青さは伝えられないし、ラーメンを食べたことない人にラーメンのうまさは伝えられないのと同じで、自分の感じること、いいなと思うこと、なんかやだなって思う事、泣くほど感動すること、もやもやすることに対して、「わかる」人と「わからない」人がいる。何かに関して「わからない」人でも、その人と一部の人にだけが「わかる」ことがある。

当然といえば当然なんだけど、感受性は人によって違う。



・いろんなことに共感できる人

ただ、個人のもつ「わかる」の守備範囲は、人によって異なる。自分の好きなものだけが「価値のある」もので、それがわからない人は「かわいそうな人」と思っている人もいる。気がする。

できることなら、いろんなことを「わかる」人になりたい。学問も、エンターテイメントも、仕事も、他の誰かが理屈じゃなく「楽しい!」って思えることは、可能な限り共感できたらいいなと思う。一致しなくても、可能な限り近づけたらいいなって思う。理解したいと思う。


ちなみに、「わかる」の一致が多い二者が「気の合う人」なのではないかと思う。




そろそろ、話が抽象的になりすぎたのでここまでにする。ちなみに僕が「わかる」って思うことが多いのは、「ぱっと見明るいけどよく見ると根暗な人」と、「文系の院生」に多い気がします。