睡眠について3冊

図解雑学睡眠の仕組み

図解雑学 睡眠のしくみ (図解雑学シリーズ)

図解雑学 睡眠のしくみ (図解雑学シリーズ)

あまり面白くない。
確かに図解でサクサク読めるが、実用的なことに関しては常識的なことが多く、専門的なところは知る必要がない。(正確な分泌ホルモンの名前など)
まさに「図解雑学」であり、実用書であるにもかかわらず「誰にどのような知識を提示し、どんな便益を提供するつもりか」が見えてこない。





ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?

ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?

ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?

非常に面白い。睡眠科学の父とも呼ばれる筆者が書いた「the promise of sleep(曖昧)」が原題の本の翻訳書。
「われわれはこれをレム睡眠と名付けた」みたいな記述があって、「えっ」と思ってWikipedia見てみたら、確かに彼が学んでいた教授と、彼がアシスタントしていた先輩研究員がレム睡眠の発見者とされていて、驚いた。研究の大家なんだ、と。

現存する「医師の観察状況下における断眠最長記録」の「医師」が筆者だというのもおもしろいし、とあるDJの不眠チャレンジにもリアルタイムで観に行っていて、そのストーリーは臨場感がある。データではなく、物語として話してくれるから面白い。

その上で、よりよい睡眠のためには、何が睡眠にとって大切か、といったいわば「睡眠学」の基礎を一通り学ぶことができる。おそらく現存する限りではこれがもっともスタンダードな学説で、常識とされているものだと思うので、睡眠に興味があれば一読して損はない。

研究内容や発表論文は結構古いようだが、出版は最近なので文体も読みやすくてよい。「難しい内容を簡単な言葉で」という意味において、非常に良質な入門書。





睡眠革命
われわれは眠りすぎていないか

睡眠革命―われわれは眠りすぎていないか (自然誌選書)

睡眠革命―われわれは眠りすぎていないか (自然誌選書)


出版は上記のものより古いが、研究は上記のあとのよう。
「睡眠は人体の回復と維持に必要不可欠である」という常識に真っ向から反対する姿勢がおもしろい。しかもまったくの暴論、精神論でもなく、むしろデータに基づくまっとうな「仮説」であることが興味深い。

前書きでもあとがきでも繰り返し述べているが
「これまでの常識を覆すような研究は、刺激的だが、人々を説得するのが大変」とあり、自分の研究方針が異端であることは自覚されているようで、その上で「常識を鵜呑みにしないで疑ってみることの有用性」を投げかけている。

睡眠研究に限らず、この姿勢は研究者として尊敬するし、このようにあるべきだと思う。


同意するかは別として、常識的な睡眠の捉え方に反論する姿勢として、ちらっと読んでみてもよい。
感想としては、前半が定性的なデータや、特殊な事例を扱っているため眉唾であり、後半の論証による反論の方が(いささか飛躍がある論理も見られるが) おもしろい。しっかりと読んでないが、一般書というよりは論文よりの体裁のため、細かい知識などについては短時間では読めない部分もある。